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テレビ・二題

Posted by ななし on 19.2013 記事 0 comments 0 trackback
今から20年以上前のテレビ人の感慨。

>セリフの少ない静かなショットでも、そこに或る絶妙の迫力を盛り込まなければならない芝居をすると、演技者はカットがかかったあと、一瞬放心状態になる。

 泣き叫んだり、笑いころげたりするときは、軽い脳震盪さえ起こす。立て続けに何回ものテストや本番はできないのである。出来たとしたら、それは芝居の純度がうすれていくか、あるいは酷使にそなえて、演技者の精神や肉体は、少しずつ、あるがままから、状況にアダプトしてムリな歪曲をよぎなくされている筈である。

 そういうアダプテイションに非凡な能力を示すのは、日本のTVで鍛えられたタレント達だと思う。多分にサラリーマン化した、TVドラマのスタジオで、本番直前にスタッフが、ドラマとは関係のない雑談に興じていてもたじろがず、あまつさえその談笑の仲間入りさえしながら、本番になると、サッと役柄に立ちかえり、かないキメ細かい芝居や、激情のほとばしる芝居をこともなくやってのけ、終わると息もつかず次のショットのセリフ合わせなどをやっている人達をみると、皮肉でも、イヤ味でもなく、ただただ感心するのである。

 一回こっきり玉砕型、の私は、長い長い口論シーンの終わりごろ、ひじょうにテクニカルな醒めた声で、
「ちょっと待った。ヘンな写りがある。お二階さん、表のガラス戸にあたってるライト、振ってみてくれ。あ、それでいい」
「ハイ、廻ってます。三十秒前!」なんぞと言われると、もうヘナヘナである。

 役者か、あるいは、人間が事にそなえて立ち直るすきを待たずに作業が進んでゆく。
 この余裕のなさの中で、日本のTV界は繁栄してきたのではないだろうか。
 TV界だけではなく、この余裕のないキリキリ舞いの、袋小路のお祭りのような賑わいの中で、日本という国は、世界の中にふくれあがってきたのではないだろうか・・・。

~岸恵子 「巴里の空はあかね雲」’83年

日本映画の黄金期、世界的な名匠・名画を輩出した時代にあって、妥協を許さない監督たちにしごかれ、名声を欲さずひたすら自らの課題追求に殉じた職人たちが下支えする、現場の空気を肌で知る女優。

彼女からみれば、80年代初頭のテレビ界はすでにサラリーマンだけが生き延びていける世界にうつったようだ。

>現代の日本の都会人は、そもそも異常な話しすぎの傾向にあります。その原因はいろいろありますが、やはり放送、とくにテレビの普及がその最たるものでしょう。テレビの普及は、各家庭内で早朝から深夜まで、ニュースにしろドラマにしろ解説にしろ、誰かがなにかをひっきりなしに話している、という状況を作り出しました。

このような状況下の家庭人が、テレビがなかったころの家庭人とくらべて、平均的に「おしゃべり」になった、ということは事実でしょう。「おしゃべり」といってわるければ、しゃべるということに無抵抗になりました。入れ代わり、立ち代わり老若男女の人間が、寸秒のいとまなくテレビの画面に立ち現れてしゃべりまくる、このことの影響は甚大です。

(中略)

それに、テレビには、原則として、なにもしゃべらないひとは出てきません。なにかをしゃべるひとが出てきます。それを見ている私たちは、なんとなく、自分たちも「しゃべらない」人であってはいけない、「しゃべる」人でなければいけないと、思い込むのも自然でしょう。

中には、せめてテレビに出てる人たちのように、またはテレビに出る以上にしゃべりたいと思うようにもなります。

こうして私たちは、テレビの受像機を一台そなえつけることによって、自然に「おしゃべり学校」に無試験入学したことになりました。

ひとことで言って、テレビは日本人をおしゃべりにしました。しゃべらなくても困らないことまでしゃべる国民にしました。

~三國一朗 「話術-会話と対話」’84年

戦後、ラジオのディスクジョッキーからテレビ界に転身し、テレビの黎明期を名インタビュアーとして支えたひとの自戒とも受け取ることのできるテレビの罪過。聞くこと、そして話すことを職業として確立させたひとの言葉だけに、逃れようのない重さがある。

>もう本当にテレビは人をひきつける力を失っていっていて、そのことにみんな気がついている

すでに四半世紀以上前、テレビは内部から瓦解していったとみることもできるのではないだろうか。

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