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「仕事のやりがい」を求めて苦しんでいる人に読んで欲しい話。

Posted by ななし on 16.2019 記事 0 comments 0 trackback
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就活シーズンが始まった。

毎年このシーズンになると、学生の方々からの相談が増える。

多いのは「仕事のやりがい」についての質問だ。

仕事のやりがいは、たとえルーティンワークなど些細なことであっても得られるので、「どんなところからでもやりがいは感じられます」と言いたいが、それを丁寧に説明するのは非常に難しい。

私は聞く。

「なぜ、そんなにやりがいが重要なのですか?」

その学生は

「やりがいのない仕事は、楽しくないから続けられないと思って。」

という。

私は答えた。

「どんな仕事でも「やりがい」を作り出すのはそれほど難しくないです。でも、それが「楽しいか」と言われると、相当の疑問が残ります。例えば、プロスポーツ選手の厳しいトレーニングは「楽しそうだ」と思いますか?」

学生はキョトンとして聞き返す。

「やりがいがある仕事は、楽しいのでは?」

私は言った。

「それは嘘です。やりがいと、楽しさは別です。ですから、楽しく仕事をしたいなら、やりがいを求めすぎると、実は楽しくなく、期待はずれに終わる可能性が高いです。」

「やりがい」と「楽しさ」は別で、両方があってこそ、人は幸福になる。
行動科学では、「やりがい」(=自分のやっていることに価値を感じる)は幸福感にとって、非常に重要であることがわかっている。

一方で、「やりがい」だけでは、人は疲弊してしまう。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの行動科学教授、ポール・ドーランは「幸福には、快楽とやりがいの両者が必要」という。

言い換えれば、快楽とやりがいの両方が私たちにとって重要だという結果だ。

つまり、「やりがい」と「快楽」は別であり、幸福な生活には「快楽」と「やりがい」の両方のバランスが取れていることが必要なのだ。

長時間労働(=極端に快楽が少ない状態)も、毎日寝てばかりの生活(=極端にやりがいの少ない状態)も、幸福になりにくいのである。


仕事は、手頃に「やりがい」を得ることができる
ただし、人は、ある程度どんな仕事でも、工夫次第で「やりがい」を感じてしまうことができる。

実際、「フロー(=精神的に集中しており、活発な状態)」の研究で知られる、米国の心理学者、ミハイ・チクセントミハイは、

「人は仕事中に頻繁にフロー状態を報告し、余暇にフロー状態がまれであった」

というデータを報告している。

仕事中、人々は能力を発揮し、何ものかに挑戦している。したがってより多くの幸福・力・創造性・満足を感じる。

自由時間は一般に取り立ててすることがなく、能力は発揮されておらず、したがって寂しさ・弱さ・検体・不満を感じることが多い。


さらに、現代社会では、仕事は財貨と社会的な地位を得る、最も重要な手段だ。

それゆえ、職業が「人となり」を表していると考える人も多い。

実際、ほとんどの大人が初対面の人に尋ねる質問は、「お仕事は何をなさっていますか?」である。

だから、現代人は「仕事」に多くを求める。

例えば、リクルートの調査によれば、「仕事には働く喜びが必要」と考える人が8割にのぼる。

「やりがいの搾取」はどこにでも存在する
以上の事実が示す通り、人は仕事にやりがいを求め、仕事はやりがいを生み出し、やりがいは幸福感を生み出す。

それはそれでよい。

しかし、「仕事のやりがい」を餌に、そこに付け入ろうとする組織も後を絶たない。

例えば、社会学者の本田由紀は、「やりがいの搾取」への警告を発する。

若者たちのなかにも、こうした「〈やりがい〉の搾取」を受け入れてしまう素地が形成されている。

「好きなこと」や「やりたいこと」を仕事にすることが望ましいという規範は、マスコミでの喧伝や学校での進路指導を通じて、すでに若者のあいだに広く根づいている(①趣味性の素地)。

しかし、実際には、企業組織内のハイアラーキー(ピラミッド状の階層構造)の底辺部分に位置づけられて、何の権限も与えられないことも多い若者にとって、裁量性や創意工夫の余地がある仕事は希少価値をもつものとして憧憬の対象となっている(②ゲーム性の素地)。

また、日本の若者のあいだでは、自分の生きる意味を他者からの承認によって見いだそうとするためか、「人の役に立つこと」を求める意識がきわめて強い(③奉仕性の素地)。

さらに、「夢の実現」などの価値に向かって、若者が自分を瞬発的なハイテンションにもっていくことによってしか乗り切れない、厳しく不透明な現実も歴然と存在する(④サークル性・カルト性の素地)。

これらの素地につけいるかたちで、「〈やりがい〉の搾取」が巧妙に成立し、巻き込む対象の範囲を拡大しつつあるのが現状だと考えられるのである。

実際、職場では「やりがい」を追求した結果、疲れ切ってしまっている人も少なくない。

やりがいは挑戦を作り出すことで生まれるので、どんな仕事でもやりがいがあるように変えることはできる。

だが、「やりがいがない(と自分が感じる)仕事をしている」=「自分には価値がない」と容易に考えてしまう人も多く、これは、現代人の病の一つなのかもしれない。


でも、本当はそうではない。

例えば、元名古屋大助教授であり、小説家の森博嗣は「仕事にやりがいを見つける生き方は素晴らしい 」という価値観にNOという。

なんとなく 、意味もわからず 、 「仕事にやりがいを見つける生き方は素晴らしい 」という言葉を 、多くの人たちが 、理想や精神だと勘違いしている 。

それは 、ほとんどどこかの企業のコマ ーシャルの文句にすぎない 。そんな下らないものに取り憑かれていることに気づき 、もっと崇高な精神を 、自分に対して掲げてほしい 。

趣味にやりがいを見出す人もいれば、ボランティアや子育てにやりがいを見出す人も数多くいる。

無理に仕事に「やりがい」を見出す必要はないし、どんな仕事であっても、それなりに「やりがい」を見つけることはできる。


また、やりがいを追求すればするほど、楽しさはなくなり、鍛錬の要素が強くなり、「楽しさ」は遠ざかる。

結局、人は、やりがいをもとめて働かなくても、幸せになれるのだ。

そういうことを、どうやってうまく伝えていけばよいのか。

就活シーズンが始まるたびに、相談を受けるたびに、悩むのである。




長曾我部幸隆
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7割弱の社会人が「学ぶ習慣」がないという現実

Posted by ななし on 09.2019 記事 0 comments 0 trackback

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技術革新が進む中で、「人生100年時代」を生き抜くために、私たちは一度身に付けたスキルや知識を進化させていくことが求められます。しかし、多忙を極めるビジネスパーソンにとって、「学び」の時間を生み出すことは容易ではありません。自ら学ぶ人は、どのような特徴があるのでしょうか。

■企業内での人材育成に限界も
日本型雇用システムでは、これまで長期雇用を前提として、組織の視点に立った、組織にとって必要なマインドやスキル、知識を身に付けるための教育訓練が行われてきました。主として、「OJT (On the Job Training)」と「Off-JT (Off the Job Training)」です。

OJTは、日常の業務に就きながら行われる教育訓練ですが、業務を遂行していくうえでは必須といえるものです。Off-JTは、社内外で通常の仕事から離れて行われる研修などで、管理職研修やプレゼンテーション、語学スキルなど、さまざまな能力開発を目的としています。これらは企業から与えられるものであり、言い方を変えれば、会社主導でキャリア形成が図られてきた側面があります。

しかし、右肩上がりの経済成長は終焉を迎え、経営活動の見通しは不安定で流動化している現在、長期雇用を前提に企業が従業員のキャリア形成を担っていくという考え方は、もはや薄れつつあります。

近年は、「働き方改革」によって労働時間の短縮化が進む中で、OJTやOff-JTを受けた雇用者の割合は、過去3年連続して減少しているというデータもあります。

人材育成を企業のみに委ねるには、限界があります。今後の技術革新や職業生活の長期化を踏まえれば、私たち自身が年齢にとらわれずに自ら学び、主体的にキャリア形成を行っていく重要性は高まっていると言えるでしょう。

そこで注目されるのが「自己啓発」によって、自発的に職業能力を高めるための取り組みを行っている人たちです。時間的な余裕は自己学習の必要条件とも言えますが、学生時代を振り返ってみても、「時間があるから学ぶ」わけではないと思います。

■どうやって学んでいるのか
職種別でみると、「専門・技術職」(45.6%)、管理職(41.2%)、営業職(38.6%)の職種で自己学習を行う割合が高くなっています。いずれも新しい知識や技術のアップデートが必要で、競争が激しく、複雑で多様な業務と言えます。

仕事の難易度が上がることで、その挑戦に向けて学ぶ意欲も高まるでしょうし、結果として評価につながれば、さらに成果を上げようとモチベーションを保ちながら自ら学び続けられるのかもしれません。

興味深いことに、自己学習をすることで、賃金に対してプラスの影響があるということも明らかになっています。自己学習を実施した場合は、そうでない場合と比べて、2.2%分だけ賃金が上昇する可能性があるというのです。例えば、年収500万円の人であれば、年収が11万円アップする可能性を示しています。

第一生命経済研究所「人生100年時代の働き方に関するアンケート調査」(2019年2月8日発表)によると、「学び直し」の経験者は、そうでない人に比べて、キャリアアップ志向があり、前向きに仕事をしている傾向がみられたそうです。

学び直しをする理由については、「現在の仕事を続けるために必要と思うから」(44.4%)、「長く働き続けるために必要と思うから」(32.4%)が上位を占めています。

他方、自分の職業生活に変化を求めて学び直しをするという側面もみることができます。現在の自分の仕事に悩みがある人の中には、転職に活路を見出し、自己の可能性を広げるために学び直したいと思う人が少なからずいるのでしょう。

では、どのような方法で、多忙なビジネスパーソンは学んでいるのでしょうか。同調査によると、「本などによる自学・自習」(49.6%)が圧倒的に多い結果となりました。

職業技能の専門書のほか、語学、コミュニケーションなどビジネススキル向上のための書籍は、多数発行されています。次に多いのが、「勤め先の人材育成のための制度・取組」です(30.6%)。

政府もリカレント教育を後押し
政府も急速な経済・社会の変化に対応できる人材を育てるために、「リカレント教育」(社会人の学び直し)の拡充に向けて取り組んでいます。2019年度より、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として、専門職大学なども創設され、にわかに注目されています。

経済的な支援としては、雇用保険の教育訓練給付制度もあります。これは中長期的なキャリア形成を支援するため、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給されるものです。

企業においては、人材こそ貴重な経営資源であり、従業員の成長なくして会社の成長は見込めません。学ぶ意欲をかきたて、能力が発揮できる場を作り、自己学習に励む従業員を評価して報いる。個人にとっても成長実感が得られることは、プラスに働きます。

企業が一方的に押し付けるのではなく、学びの機会を提供しながら、個人のキャリア形成を支援することができればwin-winになれるのではないでしょうか。

どんなにプロフェッショナルなスキルを身に付けても、産業構造などの急激な変化により陳腐化してしまうことは避けて通れない時代です。学び続ける人たちが、変化への対応力を身に付け、生き残っていけるのかもしれません。



長曾我部幸隆
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